アーク溶接部の欠陥
アンダーカットとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。アンダーカットは、溶接の止端に沿って母材が掘られて、溶着金属{溶加材から溶接部(溶接金属及び熱影響部を含んだ部分)に移行した金属}が満たされないで溝となって残っている部分のことで、溶接欠陥の一種です。
オーバーラップとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
オーバーラップは、溶接部における溶接欠陥の一種で、欠陥が表面からも確認できる表面欠陥の一つです。
オーバーラップは、以下の参考図のように、溶着金属(溶加材から溶接部に移行した金属)が止端(母材の面と、溶接ビードの表面とが交わる点)で母材に融合しないで重なることによって発生する溶接欠陥です。
クレータ割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
クレータ割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
クレータ割れは、溶接ビードのクレータの部分に発生する割れで、高温割れ(溶接部の凝固温度範囲又はその直下のような高温で発生する割れ)の典型的な溶接割れです。
スラグ巻込みとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
スラグ巻込みは、溶接部における溶接欠陥の一種で、欠陥が表面からは確認できない内部欠陥の一つです。
スラグ巻込みは、溶融スラグ(溶接部に生じる非金属物質)が浮上せずに溶着金属(溶加材から溶接部に移行した金属)の中、或いは母材との融合部にスラグが残ることによる溶接欠陥です。
スラグ巻込みを防止するには、前層(又は前パス)のスラグの十分な除去、スラグの先行防止、次の層(又は次のパス)の溶接前の形状修正、適正な運棒、棒角度及びウィービング法での施工などの対策が有効とされます。
タングステンの巻込みとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
タングステンの巻込みは、溶接部における溶接欠陥の一種で、ティグ溶接(TIG溶接:非溶極式のイナートガス溶接で、タングステン又はタングステン合金を電極とする溶接)において、タングステン電極が溶け落ちて溶接ビード中に混入することによる溶接欠陥のことです。
ビード下割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ビード下割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
ビード下割れは、以下の参考図のように、溶接継手部において溶接ビードの下側に発生する溶接割れです。
ビード下割れは、低温割れ(溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから発生する割れの総称)に属する溶接割れです。
ピットとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ピットは、溶接部における溶接欠陥の一種で、欠陥が表面からも確認できる表面欠陥の一つです。
ピットは、溶接ビードの表面に小さく窪んだ穴となって発生する溶接欠陥です。
ピットは、疲れ強さ、腐食、応力腐食割れ、腐食疲れなどの溶接部の性能に対して、条件によっては影響を及ぼしうる溶接欠陥です。
ブローホールとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ブローホールは、溶接部における溶接欠陥の一種で、溶着金属(溶加材から溶接部に移行した金属)の中に発生する球状の空洞(気孔)のことです。
アーク溶接では溶接部はアーク雰囲気中で溶融金属が高温にさらされるので、多くの酸素、水素、窒素などのガスを吸収し、それらのガスが表面に浮き上がる前に凝固することによってできる空洞(気孔)がブローホールになります。
ポロシティとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ポロシティは、溶接部における溶接欠陥の一種で、溶接金属中に発生するブローホール(溶着金属中に生じる球状又はほぼ球状の空洞)や、芋虫状に表面まで穴のあいたピット(ビードの表面に生じた小さなくぼみ穴)などの溶接欠陥の総称のことです。
ラメラテアとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ラメラテアは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
ラメラテアは、溶接継手部において熱影響部やその隣接部に母材表面と平行に(すなわち板厚方向に)はく離状に発生する溶接割れです。
十字形突合せ継手やすみ肉多層盛継手のように、溶着量の多い厚い鋼板の溶接では、溶接の収縮力によって母材の厚さ方向に引張力が作用することにより、ラメラテアが発生します。
ルート割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
ルート割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
ルート割れは、突合せ溶接やすみ肉溶接部のルート部の応力集中にで発生する溶接割れで、低温割れ(溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから発生する割れの総称)に属する溶接割れです。
ルート割れを防止するには、ルートパスに割れが発生しないうちに次の層を順次溶接することによって、直後熱と同様の加熱効果が得られて割れが発生しにくくなります。
低温割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
低温割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
低温割れは、溶接を行った後、溶接部の高温が常温付近に低下してから発生する割れの総称です。
低温割れは、熱影響部や溶接金属において溶接加工中、あるいは数日中に発生する割れで、溶接金属中に導入される水素が大きく関係し、遅れ割れの傾向を示す溶接割れです。
低温割れは、一般にその形状が鋭い切り欠きになるので、溶接欠陥の中でも特に重大な欠陥の一つです。
再熱割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
再熱割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
再熱割れは、溶接部を再加熱した場合などに発生する割れのことです。
再熱割れは、低合金耐熱鋼や高張力鋼溶接部などに溶接後熱処理(PWHTともいい、応力除去焼なましなど、溶接後に溶接部又は溶接構造物に行う熱処理)を行うと、止端部などに割れが発生する場合があります。このような再熱割れは、溶接熱影響部の粗粒域に多く発生します。
横割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
横割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
横割れは、以下の参考図のように、溶接ビードや熱影響部(溶接・切断などの熱で組織、や治金的性質、機械的性質などが変化を生じた、溶融していない母材の部分)で、溶接線に直角方向に発生する割れです。
止端割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
止端割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
止端割れは、溶接継手部において止端(母材の面と、溶接ビードの表面とが交わる点)から発生する溶接割れです。
止端割れは、ルート割れやビード下割れなどと同様、低温割れ(溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから発生する割れの総称)に属する溶接割れです。
溶接割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
溶接割れは、溶接部における溶接欠陥の一種で、割れ状となって発生する溶接欠陥のことです。
溶接割れには、表面に割れが発生する表面欠陥としての溶接割れと、欠陥が表面からは確認できない内部欠陥としての溶接割れとの両方があります。
溶接割れは、静的強さ、構造物の延性、疲れ強さ、ぜい性破壊、腐食、応力腐食割れ、腐食疲れなどの溶接部の性能に影響を及ぼしうる最も重大な溶接欠陥の一つです。
溶落ちとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
溶落ちは、溶接部における溶接欠陥の一種で、突合せ継手などの溶接において、溶融金属が開先(グルーブともいい、溶接する母材間に設ける溝)の反対側(裏面)まで溶け落ちてしまうことをいいます。
溶込み不良とは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
溶込み不良は、溶接部における溶接欠陥の一種で、欠陥が表面からは確認できない内部欠陥の一つです。
溶込み不良は、完全溶込み(継手の板厚の全域にわたっている溶込み)溶接継手の場合に、以下の参考図のように、溶け込まない部分が生じる溶接欠陥のことです。
縦割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
縦割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
縦割れは、以下の参考図のように、溶接ビードや熱影響部で、溶接線に平行に発生する割れです。
縦割れは、高温割れ(溶接部の凝固温度範囲又はその直下のような高温で発生する割れ)に属する溶接割れです。
融合不良とは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
融合不良は、溶接部における溶接欠陥の一種で、欠陥が表面からは確認できない内部欠陥の一つです。
融合不良は、以下の参考図のように、溶接ビードと開先面の間、ビード間など、溶接境界面同士が互いに十分に溶けあっていないことによる溶接欠陥のことです。
銀点とは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
銀点は、溶接部における溶接欠陥の一種であり、溶着金属(溶加材から溶接部に移行した金属)の破面に現れ、銀白色で形状が魚の眼状の溶接欠陥です。
高温割れとは、溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、アーク溶接の溶接部の欠陥に定義される用語の一つです。
高温割れは、溶接部における溶接欠陥のうち、割れ状となって発生する溶接割れの一種です。
高温割れは、溶接金属或いは熱影響部が高温にあるときに発生する割れで、一般には凝固割れと液化割れとに分けられます。
凝固割れは、溶接金属が凝固時の収縮応力に耐え切れずに開口することによって発生する割れで、液化割れは、熱影響部の結晶粒界の低融点化合物が局部的に溶融して開口することによって発生する割れと言われています。
主な高温割れには、クレータ割れ、縦割れ、梨形ビード割れなどの溶接割れがあります。